ただ傍にいる。それだけでよかった。

いくら憎まれ口を叩かれようと、バカだと呆れられようと…

あいつが俺の傍にいてくれる。

ただそれだけで、俺の気持ちは満たされていた…と思う。



宿舎の廊下で、一般兵と話しているあいつを見かけた。

楽しそうに笑顔を浮かべている。

俺には、けして見せない顔。

胸の奥が、じくっと痛んだ。

どうしようもない苛立ちが握った拳を振るわせる。

「凌統っ!!」

「あんたか…なにいきり立っんの?」

「…っ!来い!!」

俺に会った途端に不機嫌な顔になったことが、俺を更に苛立たせた。

手を引き、無理やり寝屋へ連れ込む。

そして乱暴に床へ押し倒す。

「ってぇ…何すんだっての!?」

「…黙れよ」

文句を言いたげな唇を乱暴に口付けて塞ぐ。

必死に俺を押しのけようとする腕を掴んで、床に押し付けた。

「んんっ…は、ぁっ!おま…に急に…」

再び唇に噛み付き、強く吸い上げると、抵抗しようとしていた腕の力が抜けていくのが分かる。

「ん…も、ぉ…やめ…」

喘ぎはしゃくりを上げ、泣き声に変わる。

「あ…ごめ…」

ふいに我に帰る。

手を離して解放した。

殴られると思って覚悟したら、凌統は意外にもその場に座り込んだままだった。

「えと…凌統…」

「…俺が殴るとでも思ったわけ?」

「お…おぅ…」

ぷっと吹き出して、凌統は涙を拭った。

「あんたの腑抜けた顔を見たら、殴る気失せたっての…」

「あ…」

笑った。

初めて見せてくれた笑顔。

すげぇ、可愛い。

「そのままやられちまうかと思った」

「へ?」

「あんた、俺のこと好きだって言うくせに一度も手ぇだしてこないから」

何をどうかえしていいのかわからず、ぼけっとしてると、凌統はまだ噴出して、今度は笑い続けた。

「あんたって、意外と我慢強いのな」

「お前、襲われたかったのか?」

「ば…そんなこと言ってないっつの!」

真っ赤になって蹴りを入れてくるが、全然痛くない。

少し乱れた首もとから見える鎖骨が艶っぽくて、それに気を取られる。

体の芯が熱くなるのを感じた。

「なんなら、このままするか?おめぇもその気になってくれたことだし…」

「だから、そんなこと言ってないっつの…ん…」

今度はやさしく唇を合わせる。

舌を絡ませて、緩急を付けて吸い上げる。

「ん…はっ、ぁ…かん、ね…」

「おめぇ、その顔…誰にも見せんなよ」

「…ば、かんね…」



ただ傍にいる。それだけでよかった。

いくら憎まれ口を叩かれようと、バカだと呆れられようと…

あいつが俺の傍にいてくれる。

ただそれだけで、俺の気持ちは満たされていた…と思ってた。

そう思い込むことで、体の奥にある疼きを押し殺していた。

あいつに嫌われたくない一心で、様々な欲望を押さえ込んでいた。

こんなこと、初めてのことだったけど…。



「なぁ…凌統」

「ん、なに?」

寝床の隣で眠そうにしている凌統に声をかける。

「お前…俺にも、もぉちっと笑えや」

「…ばーか」

そう言って呆れたように笑顔を向けた。




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うわ〜バカップル過ぎてすみません!!!
てか、こんな我慢強い甘寧、甘寧じゃない!
初めはシリアスで書くつもりだったんだけどなぁ…
気づいたら、バカに。
凌統も甘すぎ!
てか、半ば誘い受?(爆死)